中学生

~両国オールイングリッシュ授業のリアル~


 

入学後すぐにオールイングリッシュによる英語の授業が始まる両国の中学生たち。

大丈夫?ついていけるかな?そんな不安な声も聞こえてくるけど。。。

 

大丈夫です!

 

15期生(中3)の学年主任で英語科を担当されている鈴木 悟先生に両国におけるオールイングリッシュ授業についてお話を伺いました。


【プロフィール】

  鈴木 悟(すずき  さとる)先生

 

     15期生(現中3)学年主任

      埼玉県所沢市生まれ。

 

  • 住んだことがある場所
    アメリカ・栃木・福島・インド・小笠原諸島父島
  • 座右の銘
    住めば都!
  • 最近嬉しかったこと
    教育実習生から「30歳代かと思っていました!」と言われたこと。
    (マスク効果)
  • 最近悲しかったこと
    映画「トップガン」を見ようと妻を誘ったら“秒”で断れられたこと。
  • 今、憧れている生活
    毎日、自分で釣った魚を捌いて晩酌!
    千葉への移住検討中。今は専ら物件探し。
  • 老後の夢
    両国生が起業した会社でボランティア!

 


1)両国ではいつからオールイングリッシュ授業を導入されているのですか?

おそらく両国が中高一貫校になった15~16年ほど前から少しずつ始まったのだと思います。

 

いきなり全学年でオールイングリッシュの授業がスタートしたわけではなく、いろんな先生方の実践の蓄積、その継続によって、今のような授業の形態が確立していったのだと思います。


2)授業ではどのようなことをされているのですか?

 

授業の前半では、英語の歌を歌ったり、単語をゲーム感覚で学ぶ「ビンゴ」をやったり、NHKの「リトルチャロ」を見たり、ペアワークゲームをしたりします。

 

後半では教科書の内容に沿って、新しいことを学ぶ活動を行います。

 

また、授業には当然ゴールがあります。それが通称OPと言われるオーラル・プレゼンテーションです。

 

プレゼンテーションをより良いものにするために、単元ごとに新しい単語や表現を学んだり、生徒が自分の意見を持てるような「問い」を与えてペアワークを行います。それらの活動を通じて、教科書の本文の要約と自分の意見などを英語でみんなに伝えるのがゴールです。

 

授業の進め方は、全員が一律ではなく、各先生の個性を活かして異なる部分もありますが、中学校の授業のスタイルが統一されているのが両国の特徴だと思います。

中1 「リトル・チャロ」鑑賞中
中1 「リトル・チャロ」鑑賞中
中3 OP(オーラル・プレゼンテーション)で英語落語に挑戦!
中3 OP(オーラル・プレゼンテーション)で英語落語に挑戦!

 

3)小学校の授業で英語を学んだだけでも、中1の授業についていけますか?

 

みんな同じような不安を抱えながらスタートしていますが、先輩たちもみんなそれを乗り越えてきたという事実が大きいと思います。

 

「最初は先生が何を言っているのか分からなくても、そのうち分かるようになるから大丈夫だよ」

 

という先輩の言葉を「本当かな?」と思いながら一年過ごし、振り返ってみると確かにその通りだった、という声をよく聞きます。

 

~15期生 1年目の振り返りより~

 

最初の頃は先生が何を言っているのかがわからず困ることが多かったが、今は先生の言う内容は結構理解でき、分からない言葉がでてきても前後の言葉から意味を推測することもできるようになってきた。

~16期生への英語学習アドバイスより~

 

自分も最初はとても不安で不安で心配で心配でしょうがなかったです。みんなとても頭良さそうですが、きっとみんながそう思っています。僕はこの一年だけですごく成長できました。それは毎回英語の授業を受けて少しずつ慣れながら受け、そして課題や提出物にしっかり取り組めたからだと思います。


 

 4)授業内容は学年によってどのように変わりますか?

 

 

授業の流れは大きく変わりませんが、学年が上がるにつれて教科書で扱う単元の題材(話題)が多岐にわたり、また、使える単語や表現も増えていくので生徒が話せる内容が広がっていきます。

 

例えば、中1自分自身や家族の事など身近な話題が中心ですが、中2になると将来の夢や日本の文化など話せる範囲が広がります。中3になると「災害」や「ユニバーサルデザイン」といった社会的な内容も少しずつ話せるようになります。

 

また、授業内での問いも、中1の始めは“Do you like~?”に対して“Yes, I do.”で終わっていても、徐々に“Why do you like~?”と問い続けられても理由をしっかりと答えられるようになり、学年が上がるにつれて、互いの理由や意見の相違を楽しむようになり、授業内容が充実していきます。最終的に中3ではディベートにも挑戦します。

 

 

5)学年やレベルに応じて、授業内で先生が使う単語や表現を変えているのでしょうか?

 多くの生徒が知っているような表現を主に使い、未習の表現も少しずつ混ぜながら(生徒は意味を予測しながら聴く)話すようにしています。

 

そうすることで、中2の頃になると、ネイティブの先生方の英語も理解できるようになっていきます。中3になると、ネイティブの先生が使っている表現を生徒自身が意識して取り入れることによって、表現の幅が広がります。

 

もちろん教員が使う単語や表現からの学びに終始していると、個々のレベルアップは図れないので、生徒には、教科書・ラジオ基礎英語・リトルチャロ・歌・英検など様々な学びの場を活かしていくことの大切さを伝えています。

 


 

 6)生徒への指示がうまく伝わらないときはどうされているのですか?

 

両国の授業は、授業ごとに新しい活動を取り入れるようなことはなく、1つの言語活動を継続して行うことが多いため、指示が伝わらないで困る場面は多くはありません。仮に伝わらなかった生徒がいたとしても、ペア学習の利点を活かして、助け合いながら授業についてきています。

 

また、新しい活動を取り入れる際は、指示が伝わるようにいくつか注意をしています。教師と外国人の講師の先生でモデルを見せたり、教師と生徒で練習しながら進めます。大前提として「日本語でも指示が伝わらないような活動を入れない」と先輩の先生からアドバイスされたことがあります。活動をできるだけシンプルにすることで、指示が簡単になり、生徒はオールイングリッシュでも理解できるのです。

 

余談になりますが、学校公開や外部の方を招いての授業で「よくこんなスピードで生徒が動けますね」と言われたりしますが、いつもやっていることなので、生徒は大体やることが分かっています。

 

指示の仕方や授業の流れを変えないことが、授業の中身に集中し、充実した授業になるポイントかも知れません。

 

 

7)中1から毎日ラジオ基礎英語を聞く課題を出されていますが、その狙いは何ですか?

 

 一番は生活習慣の確立です。

 

朝に聞く生徒には、毎朝決まった時間に起きるための目覚まし代わり。夜に聞く生徒は、必然的に決まった時間に勉強し始めることになります。規則正しい生活をし、学習習慣を身に付けることが狙いです。

 

英語に関して言うと、様々な表現を身に付けるには授業だけでは限界があります。

授業以外で毎日英語に触れることで出会う単語や表現が広がります。学年が上がるにつれ、段々聞かなくなってしまう生徒もいると思いますが、先日課外活動で訪れたTGG(TOKYO GLOBAL GATEWAY)の感想を見てみると、「もう一度基礎英語を聞こうかな…」「明日から基礎英語を頑張ろう!」という声がありました。

 

学びの場は授業以外にもある、という提案の意味もあります。

 

 

8)中学では紙の辞書を推奨されていますが、それはなぜですか?

 

辞書は単に意味を調べるためものではなく、その語句の「使い方」を学ぶためのものです。

そこで、中学では紙の辞書を積極的に使いながら授業を進め、その構造と使い方を学んでいきます。

 

最近は電子辞書やパソコンを使うことも多いかと思いますが、辞書の構造を知っていないと電子辞書は使いこなせません。電子辞書は画面に一部分しか載っていないので、この先どうなっているのかを知らないとそれ以上見ることはしません。しかし、紙の辞書を使いこなせた生徒は、必要に応じて検索した単語の例文や慣用句などの情報を手に入れようとします。

 

余談になりますが、付箋を付ける目的は、自己の学習を可視化することによって「自分はこれだけ学んだんだ!」という自信と励みにするためです!

 


 

9)使用教材について

 

「GRAMMAR IN USE」(写真:下段 中央)

外国でも使われている洋書の文法書。当然、文法の説明も問題も全て英語で書かれています。英語の微妙なニュアンスが上手く説明されていて、また、問題の例文の質が良いのが特徴。3年間かけて繰り返し使用するそうです。

 

「ALL IN ONE」(写真:下段 右)

鈴木先生オリジナル教材。月ごとに授業で使用するプリント類を冊子にすることで、学習の過程や成果を可視化するのが目的。自分を褒める材料にしてほしいとのことです!

 

10)オールイングリッシュ授業で文法は身に付きますか?

 

個人差はありますが、オールイングリッシュの授業を受けていると、(私たちが日本語の「文法」を知らないで使っているのと同様に)「英文法」を詳しく知らなくても、英語を使えるようになっている生徒は多くいます。つまり、使うための最低限の英文法は身に付いていると言えます。

 

しかし、「大学受験のための英文法」という観点から言えば、オールイングリッシュだけでは、身に付いていない部分もあります。

 

よく誤解を受けることが2つあります。

 

1つめは、「両国では文法はやらないのですか?」です。単元の終わりに文法のまとめを行っています。「GRAMMAR IN USE」と併用しながら練習問題にも取り組んでいます。

 

2つめは、「文法の説明もオールイングリッシュですか?」です。両国では全ての授業をオールイングリッシュで行っているわけではありません。目的に応じてオールイングリッシュと日本語での授業を使い分けています。文法を難しい英語で説明しても時間がかかるだけなので、そこは日本語で説明した方が早いと思います。

 

単元ごとに一つの文法事項を学んで「はい、終わり」ではなく、そこからがスタートです。両国では6年間繰り返し使うことで文法事項を定着させ、受験英語にも対応していきます。

中3 夏期特別講座
中3 夏期特別講座

11)苦労されていることや課題はありますか?

 

両国の生徒は向上心があり、前向きに取り組んでいるので、ないと言えばないですが…

 

生徒の成長のペースや伸びる時期は人それぞれなので、英語の習得度合も異なります。そのなかで、教師も保護者の方も、いかに個々の成長に寄り添っていけるかが課題だと思います。成長を待つのが苦労と言えば苦労かもしれません(笑)

 

先輩の事例を1つ紹介しますと、中2の学年末に英語の学力が下位だった生徒が、国立大学に入り、今は、小学校の外国語の教師を目指しています!

【15期生 英検(実用英語技能検定)実績】

2級 23名(20%)

準2級 95名(80%)

〈2022年8月現在〉

12)英語教育において、両国が目指しているところは?

 

英語をツールとして使いこなせる人材の育成です。

 

英語を話すことが目的ではなく、英語を使って国際社会で活躍できる人材を育てていきたいです。

1つ誤解がないように申し上げますと、両国では話せるようになるためのオールイングリッシュ授業も行いながら、高校では大学受験を見据えた授業も充分に行っています!

 

両国は、その点でバランスの良いカリキュラムが確立されていると思います。これも全て、これまで両国に携わった先生方の尽力があったからこそだと思います。

 

高校の授業風景

OP(オーラル・プレゼンテーション)順番待ち中
OP(オーラル・プレゼンテーション)順番待ち中
OPはビデオ撮影&ALTの先生がチェック
OPはビデオ撮影&ALTの先生がチェック
さすがは高校生!堂々としたOPです
さすがは高校生!堂々としたOPです

ネイティブの先生による授業
ネイティブの先生による授業
ペアワーク
ペアワーク

 

13)先生ご自身はどのように英語力を磨かれたのですか?

 

生徒によく話しているのですが、英語を全く話せなかったところが自分の英語教師としての原点です。

 

大学時代の海外留学で「英語を英語のまま理解する」という衝撃的な体験をし、少しずつ英語が話せるようになりました。生徒が自分と同じ体験をできれば英語を話せるようになることは分かっていました。

 

それがオールイングリッシュ授業への挑戦の始まりです。

 

オールイングリッシュ授業をしていると、当然自分も英語を使うので自然と磨かれていきます。とはいえ、やはり日本人英語教師なので、ネイティブの先生に授業に入っていただきながら、生徒と一緒に日々学び続けています。

 

14)在校生、そしてこれから両国を目指す受検生の皆さんへのメッセージをお願いします。

 

英語はもちろん大切ですが、まず母国語をしっかりと学びましょう。そして、色々な教科の知識を身に付けて、様々な体験活動をしましょう。

 

両国で英語を学び続けていくと、将来、英語が日本語と同じレベルに近づく瞬間がどこかでくると思います。しかし母国語力を上回ることはありません。母国語力を上げていくことで英語力も伸びます。

 

もっと言えば、いろんな分野に幅広く興味や関心を持って学び、自分の意見をしっかり言えることは、国際社会で活躍するためには必須です。英語はどの分野においても使えますし、自分の意見がある人が英語を学ぶとその効果が大きいですよ!

 


 鈴木先生、お忙しいところありがとうございました!

 

『卒業生のページ』には、鈴木先生の教え子が登場します。

両国のオールイングリッシュ授業は彼らの未来にどう影響したのでしょうか?どうぞお楽しみに!